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    精神保健福祉・医療福祉学研究

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久留米大学社会福祉学科研究紀要論文(第8号2008)
タイトル
①社会福祉援助技術演習におけるデス・エジュケーションの試み
②わが国における認知症高齢者のグループホームケアに関する研究の動向と課題
③社会福祉対象者の金銭管理と生活支援策
④精神保健福祉援助実習における学生の達成動機の変化に関する研究(大西良、辻丸秀策他
⑤精神保健福祉援助実習前後での実習生のコミュニケーション技術の評価分析(大西良、辻丸秀策他)
⑥ワークプレイス・トラウマ受傷後のケア状況とその課題―病院における暴力等後の心のケア体制から考える―(大岡由佳、前田正治、辻丸秀策)
⑦被害者の感情とニーズに関する一考察(大岡由佳、辻丸秀策他)
 
久留米大学社会福祉学科研究紀要論文(第7号 2007)
タイトル
①少子高齢化時代における食育と健康・生きがいのあるまちづくり
②福祉系教員の養成における大学院の果たす役割
③犯罪被害者等の現状とその支援
④規制改革の動向と社会福祉法人の経営改革
⑤ケアマネジャーの職場環境に対する満足感とストレスに関する考察
⑥久留米市近郊の高速道路サービスエリアにおける障害者専用駐車場の使用に関する研究
⑦視覚教材(VTR)の視聴における精神科医療に対するイメージの変化
⑧実習生の自尊感情とセルフ(自己)イメージとの関係について
⑨精神保健福祉現場実習における学生の心理的変化に関する研究
⑩社会福祉専攻大学生1年生と4年生の子育てイメージ比較
⑪認知症高齢者の睡眠時・覚醒時における心拍変動に関する継続的変化
 
お知らせ

2008 年 4 月 6 日

 

後期博士課程の大岡さんが博士号(保健福祉学)を受けました。

また、末崎さん、ナタリアさんと許さんが修士号を受けました。

 

大岡由佳後期博士論文の構成と概要の紹介

 

『心理社会的視点からみたトラウマとトラウマケアの研究』
第1章  本研究の目的と意義                               
第1節 本研究の目的
第2節 本研究の意義
第3節 本研究の構成
第2章  トラウマとは何か?                                      
第1節 トラウマの心・脳への影響
第2節 トラウマの社会生活への影響
第3節 心理社会的視点からみた様々なトラウマ
第4節 ライフステージにおけるトラウマの心理社会的影響
第5節 本章のまとめ
第3章  トラウマケアとは何か?                                      
第1節 心理社会的視点からみたトラウマケア
第2節 トラウマへの心理社会的ケアの方法
第3節 トラウマケアに関わる援助者の問題
第4節 本章のまとめ
小括:第1章~第3章で見えてきた課題
第4章  トラウマの実態                                   
第1節 PTSD患者の実態(研究1)
第2節 トラウマ後の被害者ニーズの実態(研究2)
第3節 スクール・トラウマに見られるトラウマの影響(研究3)
第4節 ワークプレイス・トラウマに見られるトラウマの影響(研究4)
第5節 犯罪被害者を取り巻く社会の実態(研究5)
第6節 本章のまとめ
第5章   トラウマの実態に対するトラウマケア臨床研究                              
第1節 PTSD患者の事例研究(実践1)
第2節 被害者ニーズに対応した危機介入の症例報告(実践2)
第3節 スクール・トラウマにおけるケアチームの介入事例(実践3)
第4節 ワークプレイス・トラウマにおけるケア対策の取り組み例(実践4)
第5節 心理社会的視点からみた犯罪被害者支援方法の構築(実践5)
第6節 本章のまとめ
第6章 総合的考察                                 
第1節 本研究から見えてきたトラウマとそのケアの現状
第2節 トラウマからの回復を考える
第3節 トラウマとトラウマケアの枠組みの考察(総括)
補遺-Appendix         
・ 病院における心理教育パンフレット(PTSD患者用)
・ 職場のトラウマ対策マニュアル(看護職員用)
結語                                         
本研究の限界と今後の課題
研究の成果/おわりに/謝辞

 

 

末崎 政晃前期博士論文の概要の紹介


 

『自主研修活動KUPAから考察する精神保健福祉士の初任者研修のあり方について』


 我が国の精神保健福祉の現状については、精神障害者の長期入院やいわゆる社会的入院の問題等が指摘されており、精神障害者の社会復帰を促進することが精神福祉行政の最大の政策課題となっている。 このような状況の中、精神障害者が社会復帰を果たす上で障害となっている諸問題を解決し、医療従事者が行う診療行為に加えて精神障害者の視点に立った退院のための環境整備などについて様々な支援を行う人材の養成・確保が求められてきた。こうした経緯から、1997年12月に「精神保健福祉士法」が成立し、精神科ソーシャルワーカーが精神保健福祉士(以下PSW)として国家資格化され社会福祉専門職に位置づけられた。
本学社会福祉学科(2004年3月に初めての卒業生を輩出)のPSWコースの卒業生も専門職として現場で働きはじめた。しかし、資格化されて10年程の歴史しかないため、初任者を対象とした研修体制が職場内外で十分に整備されていない状況である。つまり職場、教育研究機関(養成校)、職能団体等関係者間で、その研修方法、内容と時間量などの検討はほとんどされていない状況である。
そこで、本論文では、初任者精神保健福祉士に対する質問紙調査、研修場面の事例研究によって、初任者精神保健福祉士の研修ニーズに対する職場、自主研修活動KUPA(久留米大学精神科ソーシャルワーカー協会)、教育機関・職能団体等の役割、およびスーパービジョンの実際について明らかにすることを目的に、精神保健福祉士の初任者研修のあり方について研究を行っている。
主な結果は次のとおりである。(1)初任者のもつニーズは、援助者としての葛藤や不安、孤独感に対する心理面のニーズと、法制度への対応、職場で担当しているクライエントへの援助や介入方法、情報収集、ネットワーキングなど実務面のニーズであることが明らかにされた。また職場内でのスーパービジョンを受ける立場である初任者の視点からは、職場ごとで相談できる質と量が左右され、職場で一定の質と量の担保されている研修が行われていない実態が示された。(2)自主研修活動KUPAにおけるピアグループ・スーパービジョンでは、逆に職場に密着した個別具体的な内容への対応は難しいが、主体性と継続性をもたせ全員参加型の双方向的なやりとりを重視することで、初任者といえども職場を越えて様々な立場や経験、視点を参加者同士共有し合うことができ、気づきが得られ、対処法を学修し、不安感や悩みの軽減、自己点検が図られ、受け皿として機能し得ることが推察された。
以上のことより、 本論文は、精神保健福祉士の初任者研修のあり方について次の点を提言している。
(1)職能団体等の役割:支持的なピアグループ・スーパービジョン、参加者間のネットワーキング(仲間作り)の要素を取り入れるような研修項目を設けていくことが必要である。(2)教育研究機関(養成校)等の役割:卒業生への教育的援助の一環として母校への里帰り研修や宿泊研修、学内学会等を開催していくべきで、教育研究機関(養成校)の卒業生への継続的な関わりは、ひいては養成課程の学生と養成教育のあり方にフィードバックされ、現場とのギャップを埋めていくことのできる校内の教育的財産となり得る。卒業生は専門職として独自に自己研讃していく必要がある。(3)卒後研修ネットワークの構築の必要性:精神保健福祉士の卒後教育・卒後研修として、職場、ピアグループ・スーパービジョン研修会、教育研究機関(養成校)、職務団体等フォーマル、インフォーマルの研修実施団体それぞれの特徴を活かした協働関係を、地域に根ざした一つのシステムとして構築する必要がある。
本研究は、PSW専門職の卒後教育に関する有意義な知見を明確に提示した価値ある論文であると考える。 またその概要は既に論文として発表されている

 

ポドリヤク・ナタリヤ前期博士論文の概要の紹介

『ウクライナにおける特別ニーズをもつ子どもとインクルージョン教育』


 

本論文は、ウクライナにおける特別ニーズをもつ子どもの社会的なインクルージョンの現状やインクルージョン教育について述べたものである。すなわち、最初にインクルージョンの定義や必要性を明らかにし、特別ニーズをもつ子どもの生活や権利についての国連とウクライナにおける歴史や考え方の変化に触れ、ウクライナにおける「Step by step」の教育科学的な実験の結果を紹介している。そして、インクルージョンされている学校とされていない学校の意識の比較を通して、インクルージョン教育の必要性について調査研究・分析を行っている。各章では、特別ニーズをもつ子どもは健常者と同様に社会の一員であるためには、彼らが社会の中で健全に暮らしていける環境整備が最重要課題である。つまり、「特別ニーズをもつ子どもの社会的適応」というプロセスがうまく機能する必要がある。特別ニーズをもつ子どもが彼らのハンディキャップを生活場面でどう感じているか、そして、健常児は特別ニーズをもつ子どもの生活目標に対してどの程度歩み寄っているかという2つの側面から評価される必要がある。特別ニーズをもつ子どもが社会に出る際に最も障壁となるのは、社会がもつ偏見や固定観念であり、彼らが自由に社会に出るためには、まずこれらの偏見、固定観念などの心理的バリアを除去することが重要である。そして、同時に、社会は彼らに対して真の理解を示す必要があり、完全な市民として彼らを受け入れる必要があると論述している。実際、「友達とよい人間関係を作れるようになること」や「社会性の発達」という項目を主な目的として「インクルーション教育」は行われており、このような環境をインクルージョン環境と定義している。また経済・社会的な問題のうち、特に教師の特別ニーズをもつ子どもに対する支援の仕方・方法や知識不足などを挙げている。「Step by step」の「インクルージョン教育方法を用いた特別ニーズをもつ子どもの社会的な受容とインクルージョン」という教育科学的な視点から研究が行われ、以下のような結果を導き出している。(1)接触経験よりも実際にインクルージョン教育を受けることによって、特別ニーズをもつ子どもに対する認識度や理解度が高められていくこと、(2)そして彼らへのイメージが、ネガティブなものからポジティブなものへと変化していくこと。これらの研究結果から、(1)特別ニーズをもつ子どもの社会的受容に対するインクルージョン教育の有用性が改めて示唆された。(2)特別ニーズのある生徒とのふれあいは、早い時期に始めるほどよく、小学校であれば低学年から始めることが重要であるということが示唆された。(3)共に活動する機会がない場合でも、福祉教育や人権教育の視点から、「障害や特別ニーズ」への理解を深める、つまり「自分とは違う子どもがいる、しかし自分と同じように大切な存在である」という考えをもてるような教育的取組を積極的に行っていくことが重要であることも示唆された。 インクルージョン教育の目的は、コミュニケーションを成立させること、そして人間関係を発展させることであり、この教育がうまく機能することで、特別ニーズをもつ子どもに対するすべてを受け入れ、暖かく対応してくれる人が増え、彼らが真の意味での自分自身を主張できるような環境が整備される可能性も高くなるといえる。そして、このような環境において、特別ニーズをもつ子どもが健常者に近い生活力を獲得できる可能性も強化されることになろう。本研究は,特別ニーズをもつ子どもとインクルージョン教育に関する有意義な知見を明確に提示した価値ある論文であると考える。 またその概要は既に論文として発表されている。

 
 
2007 年 3 月 28 日


後期博士課程の大西さんが博士号(保健福祉学)を受けました。

また、占部さんが修士号を受けました。

 
大西 良後期博士論文の構成と概要の紹介
第Ⅰ部 本研究の問題意識と目的
 第1章 精神保健福祉実習教育の現状とこれまでの研究
 第2章 本論文の目的と構成
第Ⅱ部 精神保健福祉現場実習における学生の心理的変化およびイメージ変化に関する
      実証的研究
 第3章 精神保健福祉現場実習における学生の気分の状態とその変化パターンについて
 第4章 精神保健福祉現場実習における学生の気分変化と状態不安との関連について
 第5章 精神保健福祉現場実習における学生の気分変化と特性不安との関連について
 第6章 精神保健福祉現場実習における学生の気分と自尊感情との関連について
 第7章 精神保健福祉現場実習における実習ストレスと対処行動について
 第8章 精神保健福祉現場実習における学生の気分状態と対処行動との関連について
 小括1 第3章から第8章までのまとめ
 第9章 「精神医学」受講における学生の精神障害者イメージの変化
 第10章 VTR視聴前後での「精神科医療」に対する学生のイメージ変化
 第11章 福祉学生の抱く援助対象者へのイメージ
      ~ホームレス・精神障害者・認知症高齢者の三者比較から~
 第12章 福祉学生の疾患別イメージ比較
 第13章 精神保健福祉現場実習前後で抱く学生の「精神障害」イメージの諸相
      ~言語的・非言語的表現を用いた測定から~
 第14章 精神保健福祉現場実習における自己・他者(援助対象者)イメージの比較
 第15章 学生からみる専門職像の様相
      ~学生の抱く現場指導者像を中心に~
 小括2 第9章から第15章までのまとめ
第Ⅲ部 精神保健福祉現場実習における学生の心理的変化とイメージ変化との関連性に
      関する実証的研究
 第16章 精神保健福祉現場実習における心理的変化と精神障害者イメージとの関連に
              ついて
 第17章 精神保健福祉現場実習における学生の心理的変化と自己イメージとの関連に
              ついて
 小括3 第16章から第17章までのまとめと本研究のプロセス評価
第Ⅳ部 総合考察
 第18章 本研究から得られた知見の整理と総合考察
 第19章 研究知見に基づく提言と応用的検証のための今後の課題

 

占部尊士前期博士論文概要の紹介

論文題目:福祉学生におけるホームレスの捉え方-将来における福祉の担い手が社会問題をどのよう

       に捉えているか-

 ホームレスとは、単に住む家を喪失しているだけでなく、そのことによりあらゆる市民的権利、社会の正当な構成員としての資格が結果として剥奪され、排除されているきわめて深刻な極貧の一形態であると位置づけられる。
豊かといわれる今日において、経済格差による新たなる貧困の増大、ストレス社会による自殺死亡率の増加、少子高齢化に伴う虐待や介護など様々な問題が、福祉ニーズの多様化と高度化につながっている。そしてこれらを支援する福祉専門職においても多種多様な福祉サービスに関する知識と十分な経験が必要となってきた。
そこで本論文では、極貧の一形態であり現在の貧困問題の象徴でもあるホームレスについて福祉を学ぶ学生がどのように捉えているか明らかにし、福祉系学生の持つホームレスを中心とした援助対象者イメージを捉え、学習環境やその性格的特性との関連について明らかにしたものである。
その内容は、福祉系学生のもつ自我状態と各援助対象者イメージとの関連性を踏まえ、福祉専門職の養成方法として、具体的な援助対象者を想定した上でのグループワークやロールプレイなどの継続的活用が有効であることが示された。そして、ホームレス問題について興味関心を抱かせるためには、社会現象となっているニートやフリーターの問題を含め、身近な事柄として取り組みを行う必要性があると考察している。また、福祉系学生の抱くイメージはホームレスとの接触経験や授業の既習状況と有意に関連性がみられたことから、現在の福祉教育の過程において援助対象者に関する単なる状況的知識や援助方法を教育するのではなく、援助対象者との関わりを通して援助技術や援助態度のあり方を理解できるような学習方法が望まれると述べている。さらに、ホームレス問題における教育システムとしては、視聴覚教材の活用やグループワークによる演習により、ホームレス問題に対し興味を持ち、ボランティアへの参加などを通して問題の困難さ重要さに気付き、更なる学習へとつなげていくシステムの構築が必要であると結論している。

以上のように本論文は、ホームレスを研究対象(素材)としているが、論文の中心は、福祉系学生の持つ学習環境やその性格的特性と援助対象者イメージの形成に関する実証的研究であり、大変優れた論文であると評価されるものである。